2014.11.12
温泉と民間信仰
健康と長寿をへの想いと四万の「百庚申」
四万温泉の百庚申(ひゃっこうしん)
積善館の本館から紅い橋を渡り、その先の落合通りを抜けてしばらくし山道を登ると、古くから四万の人たちに「百庚申(ひゃっこうしん)」と呼ばれている場所があります。
そこには石で造られた沢山の「庚申塔」が沢山建てられており、古いものでは文化六年(1809年)の年号が刻まれています。
古来中国から伝来した「庚申信仰」
庚申塔とは古来中国から伝来した「庚申信仰」に基づき建てられたもので、その信仰の内容は次の様なものでした。
人間の体の中には「三尸(さんし)の虫」という3匹の虫がいて、いつもその人の悪事を監視しており、60日に一度めぐってくる庚申(干支の「かのえさる」)の日の夜、その人が眠っている間に体内を抜け出して天に登り、天帝にその人の日頃の罪を報告するのです。報告を受けた天帝はその罪状によってその人の寿命を縮めてしまうので、庚申の日の夜にはこの虫が体を抜け出さないよう、村中の人が集まり酒盛り(庚申講)などをして、眠らずに夜を明かしたというものです。
そして、この庚申講を3年間18回続けた記念に、庚申塔を建てたと言われています。
群馬県内各地はもちろん、下野や武州からも
塔に刻まれている奉納者の居地をみると、群馬県内各地はもちろん、下野(栃木県)や武州(埼玉県)にまで及んでいます。
病気や怪我の治癒を願って四万温泉で湯治をする人々が、故郷と同じように四万温泉でも庚申講を行っていたのでしょう。
また、この「百庚申」の建てられている場所は、昔の四万温泉への街道沿いでもありました。当時の人達は、多くの旅人が行きかうこの場所に庚申塔を建てたのですね。
健康と長寿をへの思いを、四万温泉を訪れる沢山の人達と共有したいという古人の願いが、何百年もの時を越えて伝わってくる気がします。