2015.05.09
叶屋の通帳
明治の落語に登場した積善館 ~その3~
叶屋の御用聞き
(原文)
「へえ、叶屋(かのうや)でございます。
なんぞご入用なら通(帳)(かよいちょう)を置いていきますから」・・・
「叶屋で、ドジョウ、玉子、軍鶏(シャモ)も出来ます。
醤油、みりんも御座います。砂糖も御座います。」・・・
<『霧隠伊香保湯煙』第三十六席>より抜粋
当時の滞在は自炊が基本
当時の滞在は期間も1~3週間と長く、食事は基本的には自炊でした。
ご飯は宿が提供していたようですが、みそ汁やおかずはお客様ご自身が調理をしていました。お客様によっては人を雇って調理を頼んでいた事もあったようです。
このため、近所の店が食材を売りに来るのです。
上の場面は、叶屋という食材屋がその注文取りに来ている場面ですね。
お客様は食材を買うに際して、いちいち現金で支払いをせずに、店側が通帳(かよいちょう)を作りそれに買ったものを書きとめて、滞在の終了時に宿代と合わせて清算をするという方法が通常でした。
実はこの叶屋という食材屋は実在をしていました。
積善館にはこの叶屋の通帳が残っています。
積善館に残る、叶屋の通帳
叶屋の通帳
赤のマーカーで囲んだ部分に「叶屋」の文字が書かれています。
通帳の日付は明治25年となっていますので、円朝が積善館を訪れてから数年後のものと思われます。
円朝自身もこのような通帳で食材を買い求め、調理をしたのでしょう。
もしかしたら、叶屋さんから買っていたのかも知れませんね。